建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「木漏れ日のような灯りと共に。家族の時間を」

木漏れ日のような灯りと共に。家族の時間を

2025/12/22 更新

一年を振り返る静かな夜。
家族が自然と集まりたくなる場所には、心地よい「居場所」の窪みがあります。


□ 床座のような心地よさ。重心を低く抑えた空間構成

リビングの豊かさを語るとき、どうしても「広さ」や「天井の高さ」ばかりが注目されがちです。
しかし、私たちが本当に大切にしたいのは、身体的な「落ち着き」です。
広い空間は開放的ですが、時に人は広すぎる場所にいると不安を感じ、無意識に壁際や隅を探してしまうことがあります。

「赤羽の家」のリビングで意識したのは、空間の「重心」を低くすること。
日本人は古来より、床に近い位置で生活を営んできました。
その遺伝子が求めているのか、視線が低くなると、心は不思議と凪いでいきます。
ソファに深く腰掛けたとき、あるいはラグの上で足を伸ばしたとき、
窓の高さや天井の抑えられたプロポーションが、身体を包み込むような安心感を与えてくれます。

立って歩くための空間ではなく、座って過ごすための空間。
重心を下げることで生まれる親密な距離感が、家族の会話を自然と促します。
年末年始、家族みんなが同じ目線の高さで車座になり、他愛もない話に花を咲かせる。
そんな原風景のような団欒が、ここにはあります。


□ 畳が教えてくれる、冬の確かな温もり

冬の朝、布団から出るのが億劫になるような寒い日でも、
この家のリビングには、素足で歩きたくなる心地よさがあります。
その秘密は、床仕上げとして採用した畳にあります。

新建材のフローリングは、表面が冷たく硬質で、体温を奪っていくような感覚があります。
一方、畳は無数の空気の層を含んでおり、触れた瞬間にほのかな温かみを返してくれます。
それは床暖房のような直接的な熱源とは違う、素材そのものが持つ生命力のような温かさです。
「赤羽の家」では、手触りや足触りを最優先に素材を選定しました。

傷がつかないことや、汚れにくいことも機能としては大切かもしれません。
しかし、私たちは「触れて心地よいこと」こそが、住宅における最高の機能だと考えます。
家族の成長とともに刻まれる傷さえも、味わい深い記憶として受け止めてくれる。
そんなおおらかな素材に囲まれて過ごす冬は、格別の豊かさがあります。


□ 障子越しの柔らかな光が演出する、陰影の美学

日が落ちるのが早いこの季節、家の中の「明かり」の質は、心の安らぎに直結します。
現代の住宅は、ともすれば明るすぎることがあります。
部屋の隅々まで均一に照らす白い光は、便利ではあっても、リラックスするための光ではありません。

私たちは、光と同じくらい「影」を大切に設計します。
「赤羽の家」のリビングに取り入れた障子は、直射日光を一度受け止め、
空間全体に柔らかな拡散光として届けてくれます。
まるで森の中の木漏れ日のように、優しく、眩しくない光。
障子に落ちる庭木の影が風に揺れる様子を眺めているだけで、時間がゆっくりと流れていきます。

夜になれば、天井から煌々と照らすのではなく、低い位置にあるスタンドライトや間接照明が、
必要な場所だけを温かく浮かび上がらせます。
薄暗がりの中にこそ、人の心は開かれるもの。
陰影のある空間は、静かな読書の時間や、夫婦でグラスを傾けるひとときを、
より美しく、ドラマチックに彩ってくれるのです。

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