建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「人生を彩る背景。駒込の家は暮らしが主役の」
人生を彩る背景。駒込の家は暮らしが主役の
2026/03/30 更新
□ 暮らしの気配を優しく受け止める、静かな面
私たちのマニフェストには「住まいは単なる箱ではありません。ともに人生を彩る背景です」という言葉があります。駒込の家において、私たちはこの「背景」としての役割を大切に設計しました。自分たちが思っているよりも、人間は精密なセンサーを持っています。ぱっと見にはわからないわずかな違いを違和感やストレスとして感じたりします。ですから住宅を設計するときに「静けさ」ということを考えてみる必要があるのです。ここで壁や天井を主張の少ない、静かな面として構成したのは、そこに住まう人の個性や、日々入れ替わる暮らしの気配を大切にするためです。
建築家が設計する家というと、どこか美術館のような緊張感を想像されるかもしれません。しかし、私たちが目指すのは、日常の雑多な風景さえも美しく受け止めてくれる、懐の深い空間です。余計な装飾を削ぎ落とした白い面は、窓から入る光や、家族の話し声を静かに反射し、空間全体に穏やかな調和をもたらします。
一見すると地味に見えるかもしれませんが、それは計算された「静寂」です。あえて無機質なまでに整えられた面があるからこそ、そこに置かれた一脚の椅子、一輪の花が、驚くほど鮮やかにその魅力を放ち始めます。大切に選ばれた一つ一つの出来事。住まう人が主役となり、その背景として建築が黒子に徹する。そんな心地よい関係性を、この家では目指しました。
□ 愛着ある家具が、空間の「重心」を決める
家づくりにおいて、私たちは建主さんが長年大切にされてきた家具や、新生活のために選んだ愛着ある道具たちの居場所を、設計の早い段階から丁寧に検討します。家具は単なる機能品ではなく、その人の生き方や美意識を象徴するもの。駒込の家でも、それらが空間の「重心」となるよう、壁の長さや天井の高さ、照明の落とし方を微細に調整しました。
「特定の住空間のイメージを一度外して、住まいの基本に立ち戻る」。これが私たちの提案するフルオーダーのスタートラインです。建主さんが「どのような時に、どのようなことを大切にしたいのか」を共有し、お気に入りの椅子に座ったとき、どのような景色が見え、どのような光が手元に落ちるべきかを考え抜きます。
建築家が用意した「正解」を押し付けるのではなく、建主さんの「好き」を整理し、それを最も美しく見せるための枠組みを作る。そのプロセスを経て完成した空間は、まるでずっと昔からそこにあったかのように、住む人の身体に馴染みます。お気に入りの家具が、その場所にあるべくしてある。その充足感こそが、家づくりの醍醐味だと言えるでしょう。
□ 造作というオーダーメイドの贅沢を添えて
シンプルな背景を支えるのは、建築と一体化した緻密な造作家具です。「駒込の家」では、キッチンの収納や本棚、デスク、さらには小さなスイッチやドアノブの一つひとつに至るまで、私たちの手の提案がベースにあります。これらは、既製品をただ配置するのとは全く異なる次元の調和を生み出します。
コミットメントにもある通り、私たちは「間取りからドアノブまで(可能な限りの)フルオーダー」を信条としています。生活感の出やすい日用品は、壁の一部のような収納の中に美しく隠し、一方で、大切に見せたいものは際立たせる。この「隠す」と「見せる」のコントロールが、住まいに秩序と豊かさをもたらします。もっとも、そのためには検討や調整の時間が必要ですが。
丁寧なヒアリングを重ね、その家族にとって本当に必要なサイズ、必要な素材を吟味する。それは一見すると贅沢なことのように思えるかもしれません。しかし、五年後、十年後と時を重ねるごとに、その使い勝手の良さと、空間に溶け込む美しさが、住む人の満足度を高めていきます。妥協のない細部へのこだわりが、シンプルでありながら血の通った、心地よい「オンリーワンの場所」を作り上げるのです。急がば回れです。
□ まとめ
お気に入りに囲まれた日常こそ、家づくりの幸せ。あなただけの主役が輝く舞台を整えましょう。























