建築家・ナイトウタカシさんのブログ「老後のことまで考えた方がいいですよね?」
老後のことまで考えた方がいいですよね?
2026/08/26 更新
「老後のことまで考えた方がいいですよね?」
このご質問も、ご相談の中でよくいただきます。
「今はまだ三十代なんですが。」
「せっかく建てるなら、将来も困らない家にしたくて。」
そんなお気持ちで話してくださる方も少なくありません。
確かに、家は長く暮らす場所です。
だから将来のことを考えるのは、とても大切なことだと思います。
でも私は、このご質問にも、
「はい、老後を考えましょう。」
とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。
まずは、
「今、一番大切にしたい暮らしはどんなものでしょう。」
そんなふうに、お聞きすることから始めています。
すると、ご家族によって返ってくる答えは、本当にさまざまです。
「子どもがまだ小さいので。」
「夫婦で家にいる時間を大切にしたくて。」
「仕事が忙しくて、家ではゆっくりしたいんです。」
同じ年代でも、
今の暮らしは、それぞれ違うように思います。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「老後まで考えると、平屋の方がいいですよね。」
とおっしゃっていました。
そこで、
「今のお二人にとって、一番大切な時間は何でしょう。」
と、お聞きしてみました。
少し考えられたあと、
「子どもと過ごせる、この十年くらいかもしれません。」
と話してくださいました。
その言葉が、とても印象に残っています。
そのご家族にとっては、
何十年も先の暮らしより、
今しかない時間の方が、ずっと大切だったのです。
そのお話を伺って、
もしかすると必要なのは、
老後を優先した家ではなく、
今も、将来も、どちらも大切にできる家なのかもしれない、と思いました。
もちろん、
将来を考えた設計は大切です。
段差を少なくしたり、
あとから手すりを付けられるようにしたり。
必要になったときに間取りを変えやすくしたり。
そんな備えが安心につながることもあります。
でも、
何十年も先のためだけに、
今の暮らしを我慢し続けることが、
本当にそのご家族に合っているとは限りません。
未来は大切です。
でも、
今日の暮らしも同じくらい大切なのではないかと思うのです。
ですから、
「老後のことまで考えた方がいいですよね?」
と聞かれても、
私は、将来の話を始める前に、
今、どんな毎日を大切にしたいと思われているのか。
そこを知りたいと思っています。
家族で過ごす時間なのかもしれません。
子育てがしやすいことなのかもしれません。
夫婦がゆっくり話せる時間なのかもしれません。
その思いが見えてくると、
今を楽しみながら、
将来にも少し備えられる家の形が見えてくることがあります。
家づくりでは、
「老後のための家」をつくることよりも、
人生の変化を受け止められる家を考えることの方が、大切なのかもしれません。
私は、そんな住まいを一緒に考えていけたらと思っています。























