建築家・ナイトウタカシさんのブログ「決めきったはずなのに、揺れる理由」
決めきったはずなのに、揺れる理由
2026/05/08 更新
最終の打ち合わせを終えたあと、
こんな言葉を聞くことがあります。
「もう決めたはずなのに、
少しだけ気持ちが揺れていて…」
図面も整い、
仕様も確定している。
ここまで来れば、
迷いはなくなっていても
おかしくない段階です。
それでも、
ふとした瞬間に、
「これでよかったのか」
という思いが浮かぶ。
この揺れに、
戸惑うこともあるかもしれません。
決めきれていなかったのではないか。
何か間違っているのではないか。
そう感じてしまうこともあります。
けれど、
この感覚は、
判断が曖昧だったから
起きているわけではありません。
むしろ、
しっかりと決めてきたからこそ、
現れるものです。
「決める」ということは、
ひとつを選ぶと同時に、
他の可能性を手放すことでもあります。
その事実に、
少し遅れて気づくことがある。
また、
ここまで積み重ねてきた時間があるからこそ、
最後にもう一度、
確かめたくなる。
その気持ちも、
自然な流れです。
揺れは、
迷いとは少し違います。
前に進めない状態ではなく、
進んでいる中で
少し立ち止まって見直している状態。
その違いがあります。
もし揺れを感じたときは、
無理に消そうとしなくていい。
「もう決めたから」と
押さえ込む必要もありません。
どこに引っかかりがあるのか。
何が少し気になっているのか。
その輪郭を、
静かに見てみる。
多くの場合、
その揺れは、
すでに解消されていることだったり、
小さな調整で済むことだったりします。
あるいは、
時間とともに馴染んでいくものかもしれません。
決めきったあとに揺れるのは、
間違いのサインではなく、
自分の選択を
受け入れていく過程の一部。
その時間を経て、
少しずつ気持ちが
落ち着いていくことがあります。
揺れがあるままでも、
進んでいい。
その中で、
静かな納得が
あとから重なっていくこともあるのだと
思っています。























