建築家・相川直子+佐藤勤さんのブログ「緑背負うガルバリウム。風景を壊さず静かに」

緑背負うガルバリウム。風景を壊さず静かに

2026/05/22 更新

□ シャープな素材が守る、家族の日常

鎌倉の家を訪れたとき、まず目に飛び込んでくるのは
深く、落ち着いたトーンのガルバリウム鋼板に包まれた外観です。

私たちが外壁や屋根にこの素材を選んだ理由は、
単にモダンな格好良さを求めたからではありません。
そこには、鎌倉という豊かな自然が残る街並みへの「敬意」があります。

周囲の山々や庭の緑は、季節ごとに鮮やかに色を変えます。
その変化を最も美しく引き立てるのは、
華美な装飾ではなく、風景の背景になれるような潔い素材。
ガルバリウムのシャープなラインは、
植物の柔らかな曲線と対照を成し、互いの存在感を際立たせます。

また、私たちのマニフェストにもある通り、
住宅の耐用年数は、ローンの長さが示すように非常に長いものです。
耐久性に優れ、手入れのしやすいガルバリウムは、
何十年という時間を経ても、その端正な佇まいを維持してくれます。

「派手な形態や大げさな構成は必要ない」
そう考える私たちにとって、この素材感もまた、
鎌倉の地に根ざす「スタンダードかつ新しい住まい」の正解でした。

□ 敷地を使い切る配置の妙

敷地の広さをどう活かすかが、設計者の腕の見せ所となります。
私たちがまず最初に行ったのは、徹底的な敷地調査です。
近隣の窓の位置、視線の抜け、風の通り道、そして太陽の軌道。
それらを丁寧に読み解き、一見「無駄」に見えるような
庭や余白のスペースを、計算の上で配置しました。

家は、単なる「箱」ではありません。
内側から外を見たときに、いかに視線が遠くへ伸びるか。
隣家の壁を見るのではなく、鎌倉の空や緑を感じられるか。
この「視線の抜け」が、実際の平米数以上の広がりを生み出します。

私たちの初回提案では、模型をお作りすることが多いです。
それは、図面だけでは伝わらない余韻やイメージを
立体的に体感していただきたいからです。
敷地を余すことなく使い切るとは、建物を大きく建てることではなく、
外とのつながりを最大化することだと考えています。

□ 目に見えない安心

最後にお話ししたいのは、完成すると見えなくなってしまう、
しかし暮らしの質を左右する「中身」の話です。

私たちは、性能の数値を追うだけの家づくりはしません。
しかし、夏に涼しく冬に暖かいという基本性能がなければ、
「五感で感じる心地よさ」は成立しないとも考えています。
将来にわたって愛着を持ち続けられる家づくりの土台となるのです。

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