防火サッシの価格が大幅に高騰!今後の住宅価格はどうなる?

ここ数年、住宅業界で大きな話題となっている「防火サッシの価格高騰問題」。場合によっては2倍になるケースもあると言われています。今回は、このサッシ価格高騰問題の背景に迫ります。

マスコットキャラクターアフタ・ビフォ・ピラミドス

メーカーによる性能偽装問題が発端

片桐寛文さんの作品事例「KUMO」

防火サッシの価格が高騰するその背景とは?写真は建築家・片桐寛文さんの作品事例KUMO

昨年末から今年にかけ、サッシメーカーが新たに販売を開始した防火サッシの価格が大幅に上がっていることをご存じでしょうか。規模によっては従来の約2倍もの価格となり、工事費が2000万円ほどの住宅であれば、およそ1割のコストアップとなるケースも考えられます。住宅業界関係者はもちろん、家づくりを考えている建て主にとっても深刻な問題と言えるでしょう。
では、この防火サッシの価格高騰問題、背景にはいったい何があるのでしょうか。事の発端は、2009年の初頭に発覚したメーカー5社による樹脂製防火サッシの認定違反事件です。ここで言う「認定」とは、建築基準法で定められた「大臣認定」のこと。防火地域・準防火地域にある建物では、「延焼のおそれのある部分」(下図参照)には、大臣認定を受けた、一定の性能を有する防火サッシを使用しなければならないと決められています。ところが先述の5社の製品は、遮熱材などを増量した不正な試験体で性能評価試験を受け、「個別認定」を取得していたことが発覚したのです。
その後、2010年~2011年にかけ、国土交通省はアルミ樹脂複合サッシについても抜き打ちで性能確認検査を実施しました。その結果、大手メーカー各社のアルミ樹脂複合サッシが、大臣認定仕様とは異なっていることが発覚し、さらに大きな問題に発展したのです。樹脂サッシの問題がアルミサッシにまで飛び火した背景には、「通則認定」と呼ばれる、大臣認定の仕組みの存在がありました。

延焼の恐れがある部分に設置義務のある「防火設備」とコストダウン策

延焼の恐れがある部分に設置義務のある「防火設備」とコストダウン策

隣家が万が一火災になった際に「延焼の恐れのある部分」に対してのみ、防火設備の設置が建築基準法で求められています。隣地境界線もしくは前面道路中心線から、1階は3m以下、2階以上の場合は5m以下が「延焼の恐れがある」と定められています。
延焼の恐れのある部分以外を、防火設備ではない一般の製品を採用することがコストを抑えるコツ。また、延焼の恐れのある部分への設置を避けることで(上右図参照)、一般製品を使えるケースもあります。

「個別認定」と「通則認定」って?

「個別認定」とは文字通り、個々の製品ごとに性能評価試験を受けて大臣認定を取得するというもの。一方、問題となったアルミ樹脂複合サッシは、「通則認定」と呼ばれる方法で大臣認定を受けていました。通則認定は、「カーテンウォール・防火開口部協会(カ防協)」と呼ばれる業界団体が一括で取得した大臣認定に基づいてつくられており、各社の製品がこの仕様に準じていることが証明されれば、個別に性能評価試験を受けずに認定を取得できる、いわゆる「みなし認定」のような制度です。今回、この通則認定を受けたサッシの性能に問題が発覚したことから、通則認定品は順次販売中止となり、今後はすべて個別認定品となります。これが、価格高騰の理由です。
では、個別認定品になるとなぜ価格が高騰するのでしょうか? 簡単に言えば、「防火性能向上のためのコストアップ」ということになります。個別認定取得のための性能評価試験には費用がかかり、試験体の制作費や材料の分析費などがかさみます。それらの費用が製品の価格アップにつながるというわけです。
通則認定品は2013年内に販売が終了する見込みで、販売終了後は各メーカーの個別認定品を選ぶ必要があります(現在流通している通則認定品はまだ購入可能。ただし、注文住宅の場合は発注時期の都合上すでに購入できないケースもある)。結果としてコストがアップすることに違いはありませんが、見方を変えれば、以前より安全な住宅に住むことができるとも考えられます。火災時、窓の性能は安全上とても重要なものです。コストだけを重視するのではなく、きちんとした性能の製品を選び、いざというときに安心できる家づくりを目指しましょう。

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上記の記事は、2013年10月25日現在のものです。掲載情報の著作権は株式会社オウチーノ(以下:弊社)に帰属します。情報内容は保証されるものではありませんので、万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、弊社および情報提供元は一切の責任を負いません。予めご了承ください。

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