時代に新風を吹き込む建築家たち

2018.2.1

覚悟のデザインを「貫徹」させる

萩原吉勝(合同会社 オー・アイ・ディー アーキテクツ)

家を建てるとき、当初の計画からどんどん変わっていくケースは意外と多い。「工事が始まってからでも注文があればどんどん言って下さい」と言ってくれる建築家もいる。施主として何かと融通が利くのは助かるかもしれない。だが、そんな右往左往した姿勢で、本当に「いい家」ができるのだろうか? オー・アイ・ディー・アーキテクツの萩原吉勝は、こういった態度とは正反対に、施主とともに固めたイメージの「貫徹」を唱える。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――建築の道に入ったきっかけから教えてください。

もともと絵を描いたりモノを作ったりするのは好きだったのですが、建築を選んだ最大のきっかけは実家の建て替えです。
私が小学生だったとき、父が有名な建築家・石井和紘(1944-2015年)に設計を依頼して、ポストモダンなスタイルでわが家を建てることになった。その家づくりのプロセスを見て、子供ながらに刺激を受けたわけです。建築家と話したり、現場に入れてもらったりして。

――スタイル的にも影響を受けた?

というよりは「これがデザインなんだ!」という発見ですね。
家の中に橋(ブリッジ)があるのにもびっくりしたし、廊下や階段も、ただ「住むのに便利」なだけじゃなくて、ちゃんと「+α」があった。ひとつひとつのデザインにストーリーがある。ファンタジー要素がある。それでいて数寄屋といった「和」の要素もミックスされている。それで、デザインっておもしろいな、と。

――ご自身が注文住宅をデザインするとき、どんなことを考えていますか?

私のモットーは「住んでいる人に永く愛される家をつくる」ということ。そのためにもっとも重要になってくるのが、住む人と建物との「感覚的な関係」なんです。
単純にデザインが外観的に好みだ、というだけでなく、手で触れたり内部から質感を味わったりするとき、住む人がどういった感覚を持つか、ということ。見た目だけでなく、そういう感覚的なものにしっかり目を向けていないと、本当に心から「気に入った」と言えるものはできないわけですね。

――どうやってその感覚をデザインに反映させるのでしょう?

お客さんとの打ち合わせが大事です。話し合いのなかで、新しい家で生活するイメージをお客さんから引き出し、デザインの骨格を作っていきます。イメージが固まって契約したら、あとは一直線です。

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――せっかくイメージを共有していても予算の関係で変更になることもありますよね。

「決めたデザインは動かさない」というのは、意外と大事なことです。
打ち合わせの段階で紆余曲折があるのは仕方ないけれど、イメージが固まってからコロコロ変えてしまうと、お金も時間も無駄になってしまいます。また予算の問題で変更を加えたりするのも、がっかりした感じになってしまうし、建築家の熱意も冷めてくる。
結局のところ、右往左往するのは双方にとって良くないんです。

――コスト的にも「貫徹」する方がいいわけですね。

そもそも後になっていろいろ変わってしまうのは当初のデザインが十分に練られていないからなんです。言ってしまえば、いいデザインなら後になって「迷い」が出てくるはずがない。
家づくりは、まずじっくりイメージを固め、工事費としっかり向き合う。そして、そのプランを貫徹する。
これがベストなんです。たしかに「これが最高」というデザインを固めるのは難しいことですが、こちらはそういう覚悟でやっていますから。

萩原吉勝(合同会社 オー・アイ・ディー アーキテクツ)

photo 1978年 東京都生まれ
2007年 AAスクール大学院(英国)を卒業
2007~2010年 英国と日本の建築設計事務所に勤務
2010年 OIDを設立
2012年 オー・アイ・ディーアーキテクツを設立

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