時代に新風を吹き込む建築家たち

2013.06.7

幼児教育から建築へ、そして世界の建築へ

北原啓子(エス・デザイン一級建築士事務所)

建築家には2種類ある。ひとつは学校で建築を学んで、そのままストレートに設計事務所や建設会社に入った「建築一筋タイプ」。ふたつ目は、別の世界で働いてから、何かのきっかけで建築の世界に入った「独学タイプ」。
今回の北原氏は、さまざまな経歴の人がいる「独学タイプ」の中でも、ひときわユニークな体験を持つ建築家の一人だ。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――もともと保育所の先生をしていたんですね。

母の勧めで学校を出たあと、幼稚園教諭をし、その後障害児保育をしている無認可保育所でボランティアを7ヶ月しました。
でもある日、代表から「建物が古くなり、取り壊すので、保育所を続けられない」と相談を受けました。
行き場のなくなる子供達のことを考えると「私が開こう」と決意しました。
駅二つ離れた場所に建物を借り改築し、23歳から7年間、保育所を運営したわけです。

――そんな中で、建築とはどのように出会ったのですか。

きっかけは30歳のとき、自宅の設計を建築家に依頼したことですね。インテリア雑誌を読んで、素人なりに「リビングをこうしたい、ダイニングはこう、廊下は省いて…」と建築家に要望を伝えていたら「構造的に難しい」と、拒否されてしまいまして…。

――それはショックですね。

「なんでできないの?ではこうしたら?」と提案したら、設計士の人が、「奥さんって、建築に向いてるんじゃないですか?」と言ったんです。
2月末に家が完成し、その後キャリアを変えるのも面白いと思い、9月には設計事務所でのアシスタントとして働き出しました。
働きながら勉強して2級、1級の試験にも受かり、担当した建て売り住宅も大好評をいただき、鉄骨・RC・2×4工法とキャリアを積み、建築にどっぷりはまっていったわけです。

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――その間、海外生活もされていますね。

夫の仕事の都合でイギリスに5年住み、中国に住み、これまで約30ヶ国を訪問、滞在し今でも年に3、4回は海外に行きます。
さまざまな土地の文化や気候にあった建築をふれ、海外で暮らした経験から、建築でも家具でも、時代を経ても色褪せない「存在感を放つ本物」をという思いが強くなりました。私のイギリスの自宅は、築150年という日本では考えられないくらいの年月を重ねています。薄っぺらではない、そんな住まいづくりを提供したいというのが私の建築です。

――今の仕事を踏まえて、建築のおもろしさとは何でしょう?

家づくりの醍醐味は、お客様の生き方や人生の一部を担うことです。 お客様をはじめ、大工さん、職人たちとのコミュニケーションを大切に、信頼関係を100%つくることが良い建物をつくることになるので、それに挑戦することです。

――プランはどのように提案するのですか。

まず、お客様の要望を丁寧に整理した上で、優先順位や予算配分し、満足度の高い設計をしていきます。
じっくり整理すれば、答えはひとつです。
昔は2つ、時には3つを提案しましたが、ご要望と立地条件を深く考えると答えはひとつにたどり着き、今はひとつの最高のプランをつくるようにして、好評いただいています。
また、設計だけでなく、カーテンや照明、家具、アート、庭の植栽などのご依頼やご相談を毎回いただくので、すべて承っています。
仕事をしながら子育てし、家事の合理化、例えば掃除機をどこにしまうなど、女性ならではの目で、暮らしをコーディネートすることで、お客様により満足していただけるからです。

――確かに、照明やカーテンだけでも空間は変わりますね。

歳月を重ね住人の色に染まるのが住宅建築ですが、そのベースをまとめ上げるには、照明やインテリアなどは重要です。でも一番重要なのは光が入り、風が通って、そこに居るだけで気持ちが明るくなり居心地が良いことだと思います。
住環境は、家族の生活だけでなく、そこで成長する子供の人生にも関わるものです。絶対に「予算がないので、これでどうですか」とは言えませんし、住む側にもぜひこだわっていただきたいです。
建築家として、幼児教育や海外生活などの経験を活かし、満足度120%の家づくりを目指していきます。

北原啓子(エス・デザイン一級建築士事務所)

photo 1953年 千葉県生まれ。
1975年 千葉女子専門学校卒業
1986年 建築設計事務所勤務 1995年:渡英
1988年 二級建築士免許取得
1994年 一級建築士免許取得
1999年 渡中
2000年 帰国
2002年 株式会社山久建設不動産YAMAHASAデザインオフィス一級建築士事務所:管理建築士
2010年 エス・デザイン一級建築士事務所:管理建築士

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