「対話のキャッチボール」で限りなくベストに近づく
野口謙次郎(Ken's House一級建築士事務所)
自分は一体どんな家に住みたいのか、そのイメージをどんなふうに言葉にして伝えればいいのか――。生涯でも最大級の買い物だけに、気がかりな人は多い。それは新築でなくリノベーションでも同じだろう。しかし「自分たちだけで考えていても答えは出ないことが多い。必要なことは、なんでも建築家にぶつけてみること」と野口氏は言う。建築家と対話を繰り返す中で自分の「夢の家」がかたちになってくるというのだ。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

──ゼネコンから材木屋さんを経て独立されたんですね。
ゼネコンでオフィスビルなどの設計をしていました。当たり前ですが、大きい建物になると、設計の一部にしか関われないんです。建物の最初から最後まで関わりたいという思いが強く、木造の注文住宅の設計で経験を積んだ上で、建築家として独立しました。材木屋で働いてから10年以上木造設計に携わっているので、自然素材についてはある程度詳しいと自負しています。
──モットーとされている「安心して住める家」のために心がけていることはありますか。
実際に住むことになる施主さんと話して、要望を持ち帰って、またその人のことを考えながら作ったこちらの提案を持って行って話をして……という"キャッチボール"をできるだけたくさんすることですね。いろいろな人がある時間帯だけを過ごすオフィスビルと違って、住宅は、特定の人があらゆる時間帯を過ごすものです。だから、住みやすい家を考えるためには、住む人と実際に会って、雑談でも何でも話をして、その人のことをできるだけ深く知ること。これが一番大事だと思っています。どんな家に住みたいか、話をしていただければ、私が案を出します。構えずに気軽に相談して欲しいですね。
──何度も何度も話をすることは、施主にとってどんなメリットがありますか。
打ち合わせを重ねていくことで、気がつかなかった要望や、問題の解決策が出てくることがあるんです。たとえば、私が設計した「ねこちゃんと暮らす家」ですが、最初は、夫婦が暮らす2階建ての古い家を耐震補強したいという希望でした。それが、話を重ねるうちに、将来的なバリアフリー化なども考慮して、敷地を半分にした上で平屋を建てることになった。さらに、猫を7匹飼っていらっしゃるということで、「猫と暮らすのに最適な家」というコンセプトが出てきた。気難しい猫たちのストレスにならないよう、建て替えの段取りまで考えましたね。
──すごいですね。このケースでは合計何回くらい打合せをしたんですか?
だいたい20回くらいした気がします。最初からベストな提案はできなくても、ベターに、よりベターに、と繰り返していくことで、限りなくベストに近づくことはできる。私はそう思っているんです。
野口謙次郎(Ken's House一級建築士事務所)
1968年 大阪府生まれ。
1991年 福山大学工学部建築学科卒業。
1991年 三井不動産建設株式会社勤務。
2001年 株式会社協林勤務。
2006年 Ken's House 一級建築士事務所設立。








