時代に新風を吹き込む建築家たち

2013.08.30

構造計算に裏打ちされた「本当に住みやすい家」

中村治(株式会社MM設計)

積耐震偽装事件がマスコミを賑わせたのは2005年のこと。あれから新潟中越沖地震、東日本大震災など、何度も地震被害をうけた日本だが、家を建てるとき、耐震性が本当かと心配する人は決して多くはないだろう。私たちは知らぬうちに「のど元過ぎれば」になっていないだろうか――。デザインだけでなく構造計算の大切さを訴える中村氏の話を聞いていると、そんな気がしてくる。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──自転車の選手というユニークな経歴をお持ちですが、どうして建築の道を選んだのですか。

瀬戸内海の家島(兵庫県姫路市)の生まれです。実家が商売をしていて配達でよく自転車に乗っていたので、自然と脚力がついたんでしょう。地元の工業高校では、サイクリング部に入り、トラック競技の県代表をつとめました。卒業後は、自転車リムを作っている会社に就職も決まっていました。
一方で、子どものころから、親戚の大工さんの仕事ぶりなどを見て「島を出て建築の仕事で活躍したい」という思いもありました。結局、就職せずに大阪芸大の建築学科に進んだわけです。

──すごい決心ですね。

当時、同級生の中でも島を出るのはわずか数人という時代でしたからね。
そして、大学卒業後いずれは独立と考え知人の紹介で尾道市(広島県)にある設計事務所に勤めて、建築の仕事につきました。
地方の建築事務所なので、法規制の問題から構造計算、デザインまで、すべてを自分でやらねばなりません。住宅から公共施設まで何でもやりました。
なかでも一番ためになったのは構造計算を独学しながらたくさんやったことですね。大学でも一応勉強しましたが、本格的に構造計算を覚えたのはこのときのことです。

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──今も「構造計算ができる設計事務所」という看板を掲げていますが、普通の設計事務所とどう違うのでしょうか。

設計事務所の多くがプランニングをしてから構造計算を外注しているのに対して、私はデザインからプランニング、構造計算まですべてを一貫して手がけるということです。
私もデザイン事務所からの依頼で構造計算をすることがありますが、構造的に収まりにくいプランニングというのはよくあります。建築家がデザインばかりを考えているからですね。
一貫して手がけることで、バランスの悪い建築ではなく、きちんと構造の裏打ちがされたプランニングとトータルコストを提案できるわけです。特に敷地条件が悪いところでは、構造計算を含めたプランニングが必要だと考えています。

──デザインと構造設計のバランスが大事だということですね。

デザインも大切ですが、デザイン偏重となると考えものです。やはり、自分が住むのだったら格好だけの家より、構造的な裏打ちのあるしっかりした家に住みたい。
木造住宅の構造計算などは手間ばかりかかって儲からないので、誰もやりたがりません。だからこそ、うちのような事務所がやってあげないと、と思うのです。
依頼者が本当に望むのは、デザインだけではなく総合的な「住みやすさ」だからです。

中村治(株式会社MM設計)

photo 1953年 兵庫県姫路市家島町生まれ
1976年 大阪芸術大学芸術学部建築学科卒
1982年 広島県尾道市にてオフィス中村設計弘房設立
1987年 株式会社中村設計弘房設立
2007年 家夢空間設計工房設立( 横浜にて)
2010年 株式会社M M 設計事務所設立

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