時代に新風を吹き込む建築家たち

2015.1.30

家づくりにも「おトク感」を

鈴木伸好(株式会社中央設計)

日本で家を建てるなら、大地震などに備えて、構造的な安心を追究するのが当たり前だろう。しかし一方で、経済的な安心はとどうだろうか。コストが予想以上にふくらんで家計を圧迫したり、完成したあとで、おカネの苦労が続くようなことになれば、いくら建物が立派でも、安心は望めない。そんななかで、中央設計は、構造だけでなく「経済面でも安心」な住宅をアピールする。その秘密は、同社が設計から施工まで一貫して行うというプロセスにあるという。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――「設計事務所が家を建てる」とは、どういうことですか?

簡単にいうと、「私たち中央設計以外には業者が関与しない」ということです。普通、設計事務所は図面を作るだけで、実際に施工をするのは工務店です。つまり下請けの業者が入るわけですね。
これに対して、当社は、当社で図面を作って、当社で施工する。担当の一級建築士が、そのまま現場監督として現場に入り、職人を集めて指示し、工事全体を監理するのです。
つまり家づくりは、最初から最後まで中央設計だけによって行われる、というわけです。

――中間業者がいないことのメリットというと、なんでしょう?

おおまかにいうと、
・中間マージンが発生せず低コストになる
・そのぶん、素材にお金をかけられる
・当社が全責任を負える
この3つが挙げられますね。
まず、当社では設計料ではなく、「設計監理料」というかたちで、全費用の17%をいただいております。設計事務所に依頼する場合、設計士の利益と工務店の利益を含めた費用を支払わなくてはならないのに対して、中央設計の取り分だけで済むわけです。
また当社では建築原価、つまり建材などの仕入れ原価もすべてオープンに、お客さんにお伝えし、その上で「設計監理料」をいただいているので安心していただけます。
その結果、予算を有効に使えるので、高品質でメンテナンスしやすい自然素材など、少し高級な建材も使えるわけです。下請けの業者だとどうしても「安い建材を使って少しでもコストカットしたい」という誘惑にかられてしまいますからね。
最後の「全責任を負える」というのも、中間業者がいないからです。うちのやり方だと何かトラブルがあっても施工業者のせいにはできません。お客さんの意に沿わないことがあれば、「すべて当社のせい」というわけです。

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――どうして、このようなシステムを始めたのですか?

30年以上前ですが、当社は設備設計事務所として、大手ハウスメーカーの下請けをやっていました。そこで問題を感じたのが、元請け大手の利益率です。図面を描くだけで半分近く持って行ってしまう。「実際に作っているのはうちなのに」といつも思っていました。
「こんなことをしてちゃダメだ」と考えたとき、気がつきました。「原価をお客さんに教えない」という建築業界のやり方が問題だったんだ、と。というわけで、「原価を公開した上で、報酬をいただく」というやり方になったんです。
最初は全費用の15%だったのですが、これだと当社の利益が出ないので、17%になりました。うちも喜び、お客さんも喜ぶギリギリのラインです。

――「原価公開」の裏側にはそんな苦労があったんですね。

結局は、「お客さんに喜んでほしい」というだけのことなんです。
お客さんの立場に立てば、建物としての安全・安心感がほしいのは当たり前ですが、経済的な安全・安心感だって、ないよりはある方がいい。
家づくりでも“おトク感”を味わってほしいんです。

鈴木伸好(株式会社中央設計)

photo 東京都出身。建築に携わって35年。5年前から建築会社、工務店を一切介在させずに設計事務所ながら設計・施工・監理まで一貫して自社で全てを行なう。設計事務所として工事原価を全てオープンに施主に公開する「原価公開住宅」という新しい手法で業界に新風を吹き込んでいる。

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