時代に新風を吹き込む建築家たち

2017.11.30

「シュッとした」より「ニコッとした」こども目線の家づくり

田中克茂(一級建築士事務所株式会社アンビエンテ)

京都で活躍する建築士・田中克茂氏が家づくりのテーマにしているのは「こどもの笑顔」。これ以上にないほど直球である。家づくりを考えたことがある人なら、当たり前じゃないかと思うかもしれない。それでも彼は続ける。「もちろんお客さまの要望は100%実現出来るように目指します。その上で、家というのはやっぱりこどもが笑顔になる空間、命をはぐくむものであってほしい」。そこには「家族」にかける深い想いがあった。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――建築の道に進んだきっかけから教えてください。

私の両親はもともと神戸・北野で名の知れた高級ブティックを経営していました。母はデザイナーでした。そんなわけで、私も小さいころから自然と家業を継ぐものだと思っていました。ところが1995年、阪神淡路大震災が起き、状況は一変。被災地神戸では高級ブティックは必要がなくなってしまいました。

――苦労されたんですね。

文系大学で経営学部に通っていましたが、将来の展望が見えませんでした。「ただ、みんなと同じように就職活動して決まった会社に行く事が自分の為になるのか?何かデザインに関係する仕事はないか?」と悩んだ末、ふと建築士の仕事が思い浮かびひらめきました。「洋服を建物に置き換えると、建築ならデザインもできるぞ!洋服が建物に変わっただけだ。」 と。それで大学を卒業後、あらためて建築の学校に入学し、この道に入ったわけです。

――家づくりのテーマは「こどもが笑顔になる家」とうかがいました。

うちの事務所では、これまでに保育園や認定こども園、小規模保育、学校等施設の案件をたくさん手掛けてきました。その経験を活かして、今子育てされている方やこれから家族が増えるお客さまの家づくりのお手伝いをしたい、と思っています。「こんな暮らしがしたい」というお客さまの要望をかなえた上で、さらにこどもを安心して育てられる空間、家族がより仲良くできるようなプラン、といったきっかけを住まいで実現できれば、と。

――どうしてそんなことを考えるようになったのですか?

私自身、家で2人の娘の世話をし、保育園の送り迎えをし、事務所で保育園舎の設計をし……、とこどものことを考える時間が多かったもので、やっぱり家というものの原点にあるのは、家族のだんらんやこどもの笑顔である、という感覚があります。ニュアンスで言うと「シュッとした」より「ニコッとした」感じの家づくりをしたいな、と。

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――具体的にはどんなポイントがあるのでしょう?

大事なことは「安心とふれあい」です。
ぶつかってケガをしたり指を挟んだりといったことがないような建具やドア、階段の手すりや柵は、デザインだけを優先させるのではなく、足をかけて登ったりできないような安全な構造にします。また吹き抜けなど、親がこどもの声や気配をいつでも感じられるような空間づくりも大事です。さらに、こどもと一緒に家事や料理が出来るようにキッチンの水栓を2つにしたり、親が家事をしながらでも勉強がみれるようにキッチンから見えるスタディーコーナーを設けたり、自然とふれあえるようにしています。

――親子の会話が増えそうですね。

設計の中に親子のコミュニケーションやふれあいに繋がる仕掛けやきっかけづくりをちりばめています。

田中克茂(一級建築士事務所株式会社アンビエンテ)

photo 1994年 私立上宮高校卒業
1999年 追手門学院大学経営学部経営学科卒業
2001年 京都建築専門学校卒業
2001年 鎌田建設株式会社勤務
2003年 ㈱アトリエ創建築設計勤務
2008年 ㈲マルディープランニング勤務
2010年 一級建築士事務所 ㈱アンビエンテ設立

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