昔の家の「フレキシブル」を現代風に学び取る
冨家裕久(冨家建築設計事務所)
伝統的な住宅が評価されている。ただ、それをこれからの住宅にどう活かすのかというと、はっきりした答えを持っている人は少ない。そんな中、京都で生まれ育った冨家氏が強調するのは、町家や古民家で学んだ「フレキシブル性」だ。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

──町家や古民家の改修や活用にも取り組まれていますが、どういった点に魅力を感じていますか。
昔の家のいいところは、空間づくりのための自由度が高いことですね。町家や古民家は、「何LDK」といった言葉で表されるような間取りがなく、建物の中での空間作りが比較的自由にできます。吹き抜けや大フロアなど、空間としてのおもしろ味も出せる。新築の依頼を受けるときにも、古民家で学んできたことを積極的に活かしています。
──現代の住宅づくりに通じるところは何でしょう。
現代風に言うと「フレキシブル性」ですね。座敷の間が、寝室にも茶の間にもなる。ふすまなどの建具を外せば部屋をつなげて一体的に使えるといったことです。
よく「子供が独立した後で子供部屋をどう使えばいいのか」という話がありますが、「何LDK」の考え方では、ムダな空間が出来ができてしまう。そうならないために、フレキシブルな空間を仕切って自由に使った方がいいというのが私の考えです。
おそらく、昔の人がフレキシブルな間取りがいいと思って作っていたわけではないでしょうけれど、「現代風に学び取る」とそうなるという意味です。単に古いものをありがたがるのではなく、現代風に解釈することが大事だと思っています。
──そういった考え方を持ちつつ、施主の要望を聞いていくわけですね。
家は施主の生き方を反映するものですから、提案を作る上でコミュニケーションは非常に重視しています。要望を聞くのはもちろんのこと、こちらからも意見を出して、ざっくばらんに話し合います。そうする中で、お客さんにも私にも発見することが出てくる。このやりとりが重要ですね。
打ち合わせの目的は、家族に合った設計をするためです。子供部屋を作ったのに、結局、和室で川の字になって寝るようになったりするのは、やはり実態に合ってないからです。今は「リビングアクセス」が一般的だと思いますが、リビングアクセスにすればどんな家族でも交流が進むかというと、一概には言えないと思います。また、現実的には家が「売ろうと思えば売れる」というのも大事です。個性を前面に出したものよりも、他の人から見て「いい趣味しているね」といわれるような家だと手放すときにも評価を受けられますから。
何か型にはめるのではなく、また野放図な自由設計でもなく、家族に合ったフレキシブルな家を追究していきたいと思っています。
冨家裕久(冨家建築設計事務所)
1973年7月 京都府生まれ
1996年3月 京都造形芸術大学環境デザイン学科 卒業
1998年3月 京都造形芸術大学大学院修士課程(芸術学修士) 修了
1998年6月 關聡志建築設計事務所 入所
1999年7月 株式会社木島工業 入社
2000年3月 二級建築士 冨家建築設計事務所 設立
2004年4月 京都造形芸術大学 非常勤講師
2008年3月 一級建築士 冨家建築設計事務所に改称








