時代に新風を吹き込む建築家たち

2014.11.7

施主と設計者。両者の「理解」でつくる家

山田茂雄+河原正典(有限会社IE設計工房 一級建築士事務所)

「お客さんを理解したい」「理解しないと提案できない」。そんな言葉が何度も飛び出す。「理解」という硬い言葉に少し戸惑いをおぼえながらも、普段の施主と行う打合せの流れなどを聞いていくと、ひとつの姿勢が立ち現れてくる。それは施主の想いに対する「敬意」だ。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

mainphoto

――事務所を設立して今年で11年目になります。どんな想いでやってこられましたか?

事務所名「IE設計工房」の「IE」とは「家」です。つまり、個人住宅を手がけたくて始め、これまでのところ、住宅を中心に賃貸住宅や店舗、オフィス、診療所など、結果的に幅広くやってきました。
個人住宅のおもしろさとは、やはり、お客さんそれぞれの想いに合わせて建物を提案していくところですね。デザインを提案する前に、家を作るときは、まずお客さんとたくさん話をすることにしています。建築の話だけじゃなくて、雑談を交えながら。そのうちに「この人はこんな嗜好なのかな」と理解が進むので、それに合った建物が提案できるようになる。建築家と依頼者が協力して、調和しながらひとつのものを作っていくのがおもしろいなあ、と感じています。

――打合せはどんなふうに進めるのですか?

どんなご要望でも丁寧にうかがうことは当然ですが、その上で、互いに主張しながら、家づくりのアイデアを相補的に出していくことを心がけています。要は、こちらのやり方にお客さんを引っ張りすぎるのもダメだし、反対にお客さんに合わせすぎるのもダメだということですね。
たとえば、お客さんが迷っているときは、専門家として「こういう理由で、こちらの方がいいと思います」と、判断に役立つ助言をする。その上で、もしお客さんが、おすすめしない方を選んだとしても、その判断はきちんと尊重する、という具合です。
いい家を作るために、どんなに実現が難しくても、お客さんにはあらゆる要望を言ってほしいとお伝えします。施主が何を想い、考えているか。それを理解しないと、建築に反映することはできませんからね。

  • photo
  • photo
  • photo

――ご自身で設計した自宅「Y-HOUSE」の場合はいかがでした?

いや、難しかったですよ。
施主も建築士も自分だから簡単かと思ったら、大間違いです。いつもお客さんに「何でも言ってください」と言って聞き出している要望も、自分で出すとなると「でも専門的に難しいなあ」と思って、自制してしまう。
しかも、この建物は、自邸でありながら事務所の代表作としての役割もあります。だから住みやすさに加えて、見た人に「ちょっといいな」とあこがれを感じさせるような要素も入れたかったんです。

――構想から竣工まで5年かかっているんですよね。

とにかく苦労しました。でも、施主と設計者、両方の立場で家を作った経験は大きいですよ。「お客さんを理解し、お客さんのための提案をする」という基本を、改めて考えることができたんです。

山田茂雄+河原正典(有限会社IE設計工房 一級建築士事務所)

photo 1999年 東京理科大学工学部建築学科卒業
1999年~2002年 (株)ラカンデザイン研究所
2002年~2003年 (株)飛鳥設計
2004年 (有)IE設計工房を設立(共同設立者:河原正典)

注目の建築家

ISSUE

新着お役立ち記事

記事一覧へ

how to use

建築家オウチーノの使い方

FAQ -よくある質問と答え-

TRUSTe

このページの先頭へ