時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.7.1

コストパフォーマンスのいい木造住宅

山崎たいく(やまざき建築研究所)

その地域の伝統や風土に合っていて、しかも現代のデザインや技術を生かした居心地のいい家――。こういうと、現実的には実現が難しそうなイメージがあるかもしれない。しかし、本当にそうだろうか。山崎氏は「古いものと新しいもののを上手く融合させることで、どちらにもないメリットが生まれる」と語る。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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──どのような家をつくっていきたいと思っていますか?

ひとことで言うと「自然素材を活かした、自然な居心地の家」です。木、土、瓦、紙、鉄、ガラス、コンクリートといった普通の材料の素材感を大切にして、肌にふれる衣服のように、ナチュラルな空間をつくるように心がけています。そんなごく普通の材料を使いながら、でも自然な存在感がある。そんな家をめざしています。

──自然の素材を使うのはなぜなんでしょうか。

学生のころ、建築の勉強のために、ひと月ほどかけヨーロッパに建築旅行へ行きました。そこで素晴らしい建築を観ているうちに思ったのは、「自分は日本の伝統的な建築のことをほとんど知らない」ということでした。帰国してから、日本の古い建物を見に行ってみると、日本の建物もヨーロッパの建物に負けないほど洗練されていて、システマチックで、深みがあるものだと気がつきました。そんな思いもあって、東京の設計事務所で働いたあと、高知県の設計事務所で、伝統的な土佐の風土に根差し、かつ、新しさを持つ木造建築の方法を学びました。それから東京に戻ってきたのです。

──東京でも、風土に合った家づくりををしていこう、と。

そうですね。外国産の木材の方が低コストなイメージがあるかもしれませんが、国産材も、流通の工夫次第で安く手に入ります。国産の良質な木材は必ずといっていいほど、“豊かな空間”をつくりだしますから、ぜひ国産材を使いたい。国産材を使っていれば、林業が衰退せず、将来もいい家をつくることができます。だから、施主さんに時間をいただけるのであれば、柱や家具に使う木を一緒に切りに行ったりすることもあります。その方が住まいに愛着が生まれますし、いい木材が安く手に入る。何より子や孫の世代へ自然を受け継ぐ行為にもなる。みんなにとってメリットがあります。

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──なるほど、自然の素材を使いながら、性能面だけでなく予算的にもメリットを生み出せるのですね。

コストパフォーマンスといえば、大工さんや左官屋さんといった職人さんにも助けられています。木材以外では、僕は、東京・足立区の下町で育ったのですが、家の近所にある金属や樹脂を扱う町工場は、技術的にもレベルが高く、コストパフォーマンス最高です。既製品の建築資材にイメージどおりのものがないときでも、知り合いの町工場に頼めば作ってもらえる。とても頼もしい存在です。

──施主の要望はどんなふうに捉えていますか。

たとえ小さな要望であっても、切り捨てないで考えることが大事だと思っています。意外にも小さな要望からドラスティックに提案が変わることがあります。ですので、すべての要望を飲み込んだうえで、工夫した提案をするのが建築家の務めだと思っています。

山崎たいく(やまざき建築研究所)

photo 2001年 芝浦工業大学建築学科卒業 2001年 アルセッド建築研究所入所(東京) 2006年 聖建築研究所入所(高知) 2008年 やまざき建築研究所設立

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