時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.5.20

「暮らしをつくる」家づくり

矢野友之(フィールド建築設計舎)

「家づくり」とは暮らしをつくることだ――。そう考えれば「どんな家に住みたいか」という問いは「どんな人生を送りたいか」「どんな生き方がしたいか」という大きな問題に変わるだろう。矢野氏は、建築家として住む人の「これからの暮らし」を考えるには、いま住んでいる家での暮らしを知ることが大切な手がかりになると語る。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――大阪と和歌山を基点に活動されてるんですね。

実家が和歌山なんです。子供の頃から作ることが好きで、木材をもらってきて「秘密基地」を作ったりしてました。自然な流れで建築の道に入っていきました。大都市で、住宅も密集している大阪。木材や土地などの自然の恵みが豊かな和歌山。その両方で活動することで、双方を「いいとこ取り」し、幅広い要望に応えられると思っています。

――設計に関してモットーにしていることはありますか。

設計するときには、「どんな建物をつくるか」ではなく「どんな生活をするか」を突き詰めて考えるようにしています。図面に線を1本引くか、引かないかで、親子や夫婦のコミュニケーションが変わるかもしれない。そんなふうに、作る家は施主の人生の一部になるわけだから、設計をする人間の責任は重い。いつも緊張感を持って取り組んでいます。

――確かに、家は住む人の生き方に関わりますね。

そうなんです。だから、私は施主さんに頼んで、できるだけ建て替えたり引っ越ししたりする前の自宅、ずっと住んできた家を見せてもらうことにしています。長く住んできた家との関わりで、階段の高さなどの身体感覚ができていますし、家具や壁紙、庭の様子などからも、その人の好みがわかります。そういったスケール感覚や好みの傾向を引き継いだ家をつくること。そうすることで、新しい家に住んでも違和感を感じず、新たな暮らしにスムーズに移行していけるような家にしたいわけなんです。

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――なるほど、「今の生活」から「これからの生活」を考える、と。

家を建てると言っても、中で住む人の暮らしまでゼロから作るわけではありません。これまでの家で暮らしてきた経験と感覚があり、家族の関係やコミュニケーション、社会や自然との関わりがある。それらを引き継ぎつつ、家を通じて新しく作り替えるという観点が重要になるのです。だから、私は「新築だって一種の改修なんだ」という言い方をするんです。

――その土地の自然条件を知っておくことも必要ですね。

土地によって、光や風の具合、隣近所の見え方も違ってきますから、可能な限り情報は集めたい。施主さんの許可さえいただければ、その土地にテントを張って、どんなふうに日が差して風が吹くのか、どんな音が聞こえるのか、一度、暮らしを身をもって知ってから設計させてもらいたいですね。

矢野友之(フィールド建築設計舎)

photo 1975年 和歌山県生まれ。1994年 和歌山県立桐蔭高等学校卒業。1998年 関西大学工学部建築学科卒業。1998年 株式会社 林設計事務所勤務。2003年 フィールド建築設計舎 共同設立。

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