その中から、自分の理想の家を叶えてくれる建築家に出会うにはそれなりの「選び方」が必要です。そこで今回は、建築家選びで注意すべき点をチェック リストとしてまとめてみました。
※一級建築士の登録数は34万人となっていますが、実働数は正しく把握できていないのが実情です。
注文住宅/リフォームで建築家を起用するメリット
建築家に依頼するメリットとしてまず第一に「デザイン性」が挙げられますが、現在ではハウスメーカーの「既製品」でもデザイン性に優れた家は多くあります。近年ではオプションも充実しており、「セミオーダー」な感覚で自分にあった家を手に入れることができます。
それでも建築家に依頼するメリットとは何でしょうか。
それは「自分だけの一点モノ」を手に入れる満足感だけではありません。施主の思想やライフスタイルをデザインに落とし込んだ、既成品にはない暮らし易さが手に入ります。施工時には第三者の目で施工監理を行うため、欠陥工事などの問題も防ぎ易くなります。予算面においても、優先順位を付けて予算を配分することができるため、コストカットや予算のコントロールが可能になるのもメリットといえるでしょう。
また、変形地や狭小地において、ハウスメーカーの既成品では限界があります。その点建築家は土地の条件を活かした設計でデメリットをメリットに変えることも可能です。
このように、建築家には施主の趣味・ライフプラン、さらにはロケーションや土地条件などあらゆる要素を汲み上げて、作品として具現化する能力が備わっています。
自分にあった建築家の選び方
建築家と注文住宅を建てる場合、1年近く時間をかけるのが一般的です。コミュニケーションをとりながら長い時間をかけプランを練っていくいわば「共同作業」でもある訳ですから、建築家との間になんでも話し合える信頼関係が無くては理想の家は建たないでしょう。
建築家も人間なので、「フィーリング」は大事な要素。どうしても性格が合わないと思うのであれば、他の建築家を探した方がいいでしょう。逆にフィーリングがぴったりと合い、信頼できる建築家であれば多少経験が浅くても任せてみるべきかもしれません。また建築家選びに迷った際は以下のチェックシートを利用してみることをおすすめします。
まず一番重視すべき点は建築家の「コミュニケーション能力」です。コミュニケーション能力が乏しい建築家では、いくらデザイン能力が高くても住まう人の希望を汲み上げることはできず、「理想の住まい」に近づくことはできません。
また建築家のコミュニケーション能力は、実際の工事段階でも活きてきます。建築家は工務店・大工の行う工事が正しくされているか、チェックする「施工監理」を行いますが、施工する側ともコミュニケーションの上に成り立つ信頼関係がなければ良い工事はできないでしょう。
建築家としての能力はもちろんのことですが、お金のやりとりやスケジュール管理などで信頼感を持てる人を選びたいところです。
信頼感を量る指標のひとつになるのが、「見積りが明朗である」こと。見積りが出たときに「内訳明細」があるか確認しましょう。職人技ゆえに不明瞭な料金体系になりがちですが、信頼に足る建築家であれば内訳についても明確にしてくれるはずです。「なぜこれだけのお金が掛かるのか」という点を明確に説明できる建築家は信頼できると言えます。
デザインに走り過ぎて、実際の使いやすさや素材の意味合いを無視してしまう、また施主の希望や予算を無視した設計をする建築家は避けるべきです。
優れた建築家は「現場」を熟知しているものです。現場を知れば、安全な構造とデザインのバランスを量ることができ、住まう人に最適な動線や配置を提案することができます。また施工段階での「監理」も、現場を知らなければおそろかになってしまいます。
「現場度の高さ」をチェックするには、その建築家の過去の作品を見学させてもらうことがベストです。デザインに目を奪われるだけではなく、使いやすさや住みやすさなど「家」としての機能をしっかりと確認しましょう。可能であれば施主にも満足度を聞いてみたいところです。
「理想の住まい」とは住まう人の人生や思想を現すものであり、建築家はその理想を具現化するナビゲーター、といっていいでしょう。その意味合いで言えば、「理想の住まい」とは施主と建築家によるコラボレート作品と言えます。
「コラボレート」で重要なのは、施主と建築家の美的価値観が合致していること。いくら著名で優れたデザイン能力を持つ建築家でも、好みに合わないならば選ぶべきではありません。
建築家にも得意・不得意があります。例えば素材選びでも、金属やコンクリートといった無機質な素材を好む建築家がいたり、自然素材を得意とする建築家がいたり、と様々です。
自分の好みと建築家の得意分野が合致しているかどうかもチェックすべき点です。
また、その建築家の現場地域での実績もチェックしておきましょう。
例えば、畳のサイズは西日本で一般的な「京間」と、東日本の「江戸間」では異なるなど、地域ごとに建築習慣の差があります。さらに地域ごとに気候が大きく異なるため、札幌と東京と那覇とでは建築の仕様もコストも変わります。これらの地域差を熟知していない建築家では不安が残ります。
上記では建築家を選ぶ際に注意したいチェック項目をご紹介しましたが、これらはあくまで基本的なもの。実際の施主さんの中には第一印象で全く経験の無い建築家に設計を依頼し、とても素晴らしい住まいが出来上がった例もあります。また、全ての基本になるのは住まう側がどのように暮らしたいのかを明確にすること。建築家に依頼する段階では不明瞭であっても構いません。建築家とのコミュニケーションを通して、どこにこだわりたいのか、暮らしのビジョンを明確化できれば、きっと理想の住まいが実現できるでしょう。