目に見えないものを大切にしたい
橋本直明(株式会社橋本直明建築設計事務所)
家づくりは建築家とのコミュニケーションで決まる。ただそうはいっても、思ったことをポンポン口に出していいのだろうか。そんな考えに対して、橋本氏は直感的な言葉こそ大事だと語る。根底にあるのは「施主から学ぶ」という考えだ。
インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

──どんな家が理想だと考えていますか。
ひとことで言うと、長く使っていてストレスのない住宅がいいですね。たとえば、私はマックを使っていますが、アップルの製品も長く触っていてストレスが少ない。住宅も同じで、長く使い続けたくなるような便利さ、快適さ、楽しさ、美しさが要ると思っています。私はもともと、ガウディの建築で、生物や植物のデザインを活かしているのを見て、建築家になりたいと思うようになりました。自然を意識したデザインのように気持ちよく使えるのが一番だと思っています。
──施主さんとのコミュニケーションで気をつけていることはありますか。
何が大事なのか「かなえられる要望が3つだけとしたら、どうしますか」という訊き方をすることがあります。その時に出てきた直感的な言葉は、大事ですね。練られたものでなくても、「あたたかさ」「便利さ」「収納たくさん」なんかでいいんです。こちらの提案を膨らませていくタネになるし、迷ったときにも、その直感的な感覚を考え直すことで、どうすればいいか、わかってくることがあります。施主さんの直感的な言葉は、スタートでもあり、ゴールでもあると感じています。
──そんな中で楽しいと感じるのはどんなときですか。
集中して考えているときでしょうか。無理難題を解く楽しみ、と言いうか、解決が難しい問題ほど建築家としてはやりがいを感じます。私は、考えて考え抜けば、どんな問題にも必ず答えが出ると思っています。施主さんの言葉から考えて、答えを探すこと自体が家造りなんです。
──-印象に残っている施主さんの言葉はありますか。
以前、外断熱した鉄筋コンクリートの住宅を、ローコストで作ってほしいと頼まれたことがありました。試算してみると、構造を作って外断熱したら予算をほぼ使い切って、内装に回すコストはない。正直、厳しいと思ったので「外断熱をあきらめてはどうでしょうか」と聞くと、施主さんが言ったんです。「自分にとっては、目に見えることより、温かい壁に囲まれているという実感こそ大事なんだ」と。
──なるほど、人によって価値観は違うんですね。
たとえば、床の暖かさや風の流れは、設計図でもわからないし、写真にも写りません。しかし、そういうものが大切なんだと施主さんに教えられました。その時から「目に見えないもの」を大事にしていこうと心がけています。
橋本直明(株式会社橋本直明建築設計事務所)
1968年 群馬県生まれ。
1991年 早稲田大学理工学部建築学科卒業。
1993年 早稲田大学大学院修士課程修了。
1993年 ILCD勤務。
1995年 武蔵野美術大学映像学科講師。
1996年 橋本直明建築設計室開設。
2001年 早稲田大学建築学科非常勤講師。
2009年 株式会社橋本直明建築設計事務所へ改組。








