時代に新風を吹き込む建築家たち

2011.4.26

「好きなこと」を貫き通した家をつくる

進藤強(一級建築士事務所ビーフンデザイン)

建築家に要望を伝えるとき、私たちは気持ちをストレートに言葉にできるだろうか。いろいろなことを考慮するうち、次第に「落としどころ」を探るような姿勢になっているかもしれない。そんな迷いに、進藤氏は「好きなことを追い求めてください」と訴える。

インタビュー、構成:建築家O-uccino編集部

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――建築家として、どんな家をつくりたいと思っていますか。

 コストや期日などの条件をクリアするのは専門家として当然のこととして、何か心が動かされるような要素を加えていきたいと思っています。私自身、好きなことしか勉強しなかった結果、建築家になりました。だから施主さんも自分の好きなことを追究して、妥協しない家づくりをしてほしいと思っています。

――好きなことを明確にするのは大事ですね。

 思い出されるのは釣りや登山、カヌーなど、アウトドアが大好きなご夫婦の依頼です。ハウスメーカーと話しても満足できるようなプランがなく、知り合いを通じて私に相談が来ました。ご夫婦は当初、デザインにさほど関心がなかったんですが、設計が進むにつれて、どんどん「これがいい」という好みが出てくるようになりました。結果的に、まるでキャンプしているかのような感覚が味わえる開放感のある家になりました。好きなことを無意識に我慢するのではなく、まっすぐに求めるのは本当に大切なことだと思いましたね。

――趣味のほかに、どんな家庭をつくりたいかも重要です。

 そう、家族とひと口に言っても、同じ家族はどこにもないのだから、みんな違う家になるはずなんです。だから、施主さんには、「どんな家に住みたいか」という問いの前に、「自分は人生で何を大切にしているか」ということを考えてもらうようにしています。

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――いざ考えるとなかなか大変そうです。

 難しく考えなくても大丈夫です。たとえば子供の頃、どんな遊びをしていたか、兄弟でどんな関係だったのか、住んでいた街はどんなところだったか、といったこと、言い換えれば「自分はどう育ったか」を思い出してみるだけでもいい。そこから「自分の子供にはこんな体験をさせたい」「夫婦、親子でこんなふうにくつろぎたい」「将来は家族でこうなりたい」といった自分の中にある「大切なもの」が見えてくるんですね。

――なるほど、そこを適当にやりすごしてはダメなんですね。

 私は昔からオープンカーが好きで、気候がよくて晴れているときは気持ちいい反面、雨が降ったりして大変な目に遭うことも多いんです。しかしそれでも、私はオープンカーが楽しいと感じます。家も同じで、建売住宅を買わずに、建築家に相談してつくるのは時間がかかるし、ソツのない普通の家のほうがいろいろ楽かもしれません。しかし、人生を楽しむためには、他の人は理解できなくても「私はこの家が好きだ」と言えるような家に住むことが大事だと思うのです。

進藤強(一級建築士事務所ビーフンデザイン)

photo 1973年 兵庫県生まれ、 1996年 京都精華大学卒業、 1998年-2002年 株式会社アーキテクトン、 2001年 ビーフンデザイン共同設立(進藤/長谷川/菅藤/上村)、 2004年-2007年 株式会社コムデザイン入社(2005年取締役に就任)、 2005年 ビーフンデザイン Y・Studio開設(代々木事務所)、 2006年 ビーフンデザイン H・Studio開設(初台事務所)、 2007年 一級建築士事務所ビーフンデザイン。

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