建築家だからここまでできた!
間取りとは、基本的に「室内をどのように仕切って、どのような部屋をいくつつくるか?」といった “水平方向”の空間計画のこと。一方で、スペースを広く見せたり、視線をコントロールしたりといった効果まで含めて複合的に間取りを考えると、“垂直方向”についての空間計画が重要になってきます。このような住まいの“高さ”をコントロールする手法の1つが「スキップフロア」なのです。
スキップフロアで狭小地でも広々
スキップフロアとは、1階と2階の間、または2階と3階の間など、階と階の間に中間層を設け、文字通り“スキップ”するようにフロアを連続させる方法のこと。スキップフロアの最大のメリットは、何と言っても「空間を広く見せることができる」という点でしょう。狭小地では特に有効な方法です。限られた敷地スペースでも、垂直方向に変化を付けることで実際の床面積以上の開放感が得られます。さらに、通常の2階建てや3階建てなどとは違い、上下階がひと繋がりになる点もポイント。部屋と部屋、階と階を仕切る壁や天井が少なくなれば、敷地の狭さを感じさせない広々とした空間が実現できるのです。
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他にもある!段差の意外な使い道
スキップフロアによって生じた段差の使い道にも注目。例えば段差の内部に引き出しなどを設置すれば、デッドスペースも収納として活躍してくれます。 ほかに、リビングなどに面して低めの段差を設け、スキップフロアをベンチのように使うという方法もあります。視線の先に大きな窓があるような配置にすれば、ちょっぴり高いところからのんびりと風景を眺められる特別な場所になることでしょう。 さらに、段差には「部屋と部屋を緩やかに区切る」という効果を持たせることもできます。例えばリビングから少し高いところにスキップフロアを設け、そこを子どもの遊び場にする、といった具合です。部屋と部屋の境界を壁ではなく”段差”にすることで開放感が損なわれず、子どもが小さくても常に目が届くので安心です。
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知っておきたいスキップフロアのデメリット
魅力たっぷりのスキップフロアですが、もちろん、いくつかのデメリットもあります。1つは、バリアフリーへの対応が難しくなること。段差を楽しむスキップフロアは、言わばバリアフリーと対極の存在です。高齢者との同居や車いすの利用者がいる場合はもちろん、動線に段差があることに住みづらさを感じる場合は、スキップフロアはおすすめできません。
また、空間全体がひと繋がりになるスキップフロアは、どこに居ても家族の気配が感じられる、開放感が得られるなどのメリットが得られる反面、家族間のプライバシーが確保しづらい、遮音性が低いといったデメリットが避けられません。家族が希望するライフスタイルがどのようなものなのか、事前にしっかりと見極めたうえでスキップフロアを検討する必要があるでしょう。 -
建築家とのコラボでスキップフロアをより快適に!
最後にもう1つ知っておきたいのが「スキップフロアは簡単ではない」ということ。一般的な総2階などの住宅に比べて構造(骨組み)が複雑になるため、設計には十分な経験と知識が求められます。ハウスメーカーや工務店によってはスキップフロアに対応できないケースも少なくありません。さらにスキップフロアでは、家全体がひと繋がりの大きな吹き抜けになることから冷暖房の効率が悪くなり、光熱費がかさみやすいという欠点もあります。
こうしたさまざまな問題点を解決してくれるのが、建築家の存在です。建築家なら、構造家との協業で丈夫な骨組みと優れたデザインの両立が可能です。また建築家は温熱環境のプロフェッショナルでもあります。冷暖房器具の効率的な配置方法やシーリングファンの活用など、さまざまなアイデアで、冷暖房効率の問題も解消してくれることでしょう。
建築家によるスキップフロア住宅の事例
建築家がさまざまな工夫を凝らしデザインをした、スキップフロア住宅の事例をラインナップしてお届けします。
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長庭の家
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市川のコートハウス
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
郊外の 標準的な住宅地ですが敷地の北側に人の立ち入らない雑木林が残っていて、その環境を上手に取り入れる事がテーマのひ とつになりました。一方でプライバシーを守るために南側の道路面はあえて閉じて、中庭を囲むコートハウスの配置とし ています。そして、家のどこからでも北側の緑が見通せるように配慮することで、常に外部空間を感じることの出来る開 放感に満ちた住宅となっています。
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美章園の家
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中目黒かどのいえ
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
中目黒 駅近くの住宅地におけるかど地の30坪敷地に建つ住宅です。1.2m程の盛土があるので車庫を半地下にしたスキップ フロアが最善と考え設計を詰めました。東南の角に3.5階分を繋ぐ階段室を設け、そこには丸いトップライトと縦長の スリット窓からの光が舞い下りています。1階のリビング・ダイニングルーム吹抜けのちょうど中央には2階の子供室が 宙にぶら下がっています。
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スキップテラスの家
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
坂に面 して建つ住宅です。 敷地の高低 差を利用して、外部空間に地上から2階まで、段差のある外部空間を形づくり、室内と結びつけることで、多様な住空間を展 開しました。 白い四角の 外観の中に、内部、外部、吹抜等を立体的に組み込み、広がりのある建築空間をめざしています。
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『』の家
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
敷地を 最大限有効活用するために内・外装を兼ねた断熱材入りサンドイッチパネルを隣地境界際に立てて鉄骨の柱梁をそのまま 露出、倉庫の中に暮らすような住まいになりました。南面の大きな開口とルーフテラスから太陽光を家全体に取り入れつ つ、透過性の異なる3種類のカーテンによって時間や用途に応じてプライバシーを調整できます。
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桜丘の家
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
都市部 にありながら緑地公園に面した緑の景観に恵まれた敷地で、公園の緑をいかに生活の風景に取り込むかが設計のテーマと なりました。公園への見通しを良くするためと、公園を利用する人々の視線を避け家の中を覗かれない様にするために、 リビングの床を半階上げたスキップフロアとしています。その結果、公園とは程よい距離感が生まれ、公園で遊ぶ子供達 を見まもりながらリビングでくつろぐことが出来るようになりました。
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みかん山にある小家
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甲賀の家/地下室のあるスキップフロア
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
スキッ プフロアならではの空間の広がりはそのままに、デメリットである冷暖房のロスを省エネルギー設計仕様とすることでク リアしています。
7.2mx7.2m の四角い箱の中をスキップしながら各フロアが連続して繋がっていき、豊かな空間を演出しています。 -
高崎の家
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半地下スキップフロアーの家
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
希望し ているエリアで、土地情報を入手し、予算に合う住まいづくりが始まった。 狭小地であ りながら、豊かな空間を生み出し、高気密サッシとLow-eガラスの採用と 室内循環換 気システムの導入で、夏涼しく冬暖かい住まいが誕生した。
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桜丘の家2
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
グ ランドピアノには高い天井が必要でしたが、家全体のバランスに考慮して床を下げる事で空間を確保しました。ピア ノ室の階下はご主人の書斎となっていて、床と天井を作らない事で天井高さを確保しています。基礎を直接モルタル で仕上げ、天井も構造を現しにした結果、地下室のような独特の雰囲気を持った部屋となりました。蓄熱暖房器のお かげで冬にも冷え込む事がなく、夏も涼しい快適な書斎です。
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杉並の家
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
周囲に 家が建ち並ぶ中、プライバシーを守りつつ、広がりの感じられる住空間を展開しようと考えました。 敷地の段差 を利用し、半分土に埋めるようにコンクリート造で入口階(地階)を設け、その上に木造で、開放的にLDを展開しました。 LDの広が りを生み出すため、庭に面して全面ガラスにし、外に庇と濡縁によって半屋外空間をつくることで、室内外の一体感を高めま した。
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高槻の家
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狭小地の重量鉄骨3Fガレージハウス
- 関東
- 東海
- 関西
- 九州
こだわりポイント
14.8 坪の敷地で、駐車場2台、スクーター5台を収容できるガレージハウス。狭小地でありながら、広々した空間を生み 出し、屋上では、BBQが楽しめる。
敷地の 四方に隣家が近接しており、良い眺望が期待できないため、中庭形式としています。街に対して開くのではなく、内に開 くという構成となっており、内部空間と中庭が伸びやかに連続する空間となっています。また、白を基調とした仕上げと することで、空間がより明るくなる構成としています。